都市シリーズ第5弾。発行されたのは99年とだいぶ前だが、そういうことは関係なし。こういうSFものは時代に左右されつつもそれを超える楽しさがある。

 巴里はドイツ軍の爆弾(正式には爆弾では無いのだがまぁそういうことにしておく)により第二次世界大戦中の1944年を繰り返す事になってしまった。
 巴里以外の都市は巴里が無い中で時間が進み、巴里は時間を繰り返す。

 そして世界は巴里を見捨てて進んでいく。

 その中でベレッタは異邦人として巴里に留学する。巴里は己の閉鎖を完全なものとするため外界からの異物を受け入れないようにしている。
 閉鎖を完全にするために留学という制度を用いて巴里のバックアップを完成させる。ものは取り出す事も中に入れ込む事も出来ないが、記憶だけは残すことが出来る。
 一度中に取り込み、初期化時に無いものは外にはねのける。そうすることで閉鎖を完全にしていこうとする都市。それは爆発の時、巴里の人たちがそれを望んだから…
 だとしたらそれをもし望まなかったら…

 99年から44年へ留学し、その中でベレッタは自分の曾祖父であるジャックの「A計画」を追う。それはペレットが重騎に興味を持った理由でもあり、この留学の目的でもある。
 今までのバックアップで作り上げられた歴史がベレッタの行動で変わっていく。しかしそれは初期化で全てやり直され、また同じような歴史を繰り返す事になる。

 留学してきた異邦人のベレッタ。
 自動人形で人になることを悩むロゼッタ。
 その親代わりであるギヨームのおっさん。
 隣人で小姑なマレット。
 仏蘭西貴族でありつつ独逸軍に志願したフィリップ。
 嘆きからP計画に身を投じたハインツ。
 初期化を幾度もなく見つめ続けるロゼ。

 数多くの人たちが関与し合い、それが今までとは違う歴史を作り上げていく。たった一つの差違が歴史上大きな違いを生み出していく。
 巴里が完全な閉鎖を望む中でそれぞれの人は何を望むのか。
 それが見所かもしれない。

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 ということで一応3日ほどで上下終了。
 伯林は何年間も続いた話だが、こっちは約1年で終了。早いと言えば早いが…内容が濃すぎる。やはり流体などの概念があるので伯林などは読んでいると良いかもしれない。パンツァーポリス1935を読んでいると別の意味で
「あ〜こういうことか」
 と分かるかもしれない。伯林とも多少は接点があるので読んでみる価値はある。

 やはり一番好きなのはフィリップだな。最後の最後まで彼は泣かせてくれる。そこは読んでからのお楽しみということで。

 伯林は1巻毎に話がある意味完結していてとっとと読み終わったが上下になっていると一気に読むのが一苦労。ついでに時間を見つけるのも大変だ。
 上巻は日常的な話が中心で布石となるものが多い。下巻はそれを生かして一気に話が進んでいく。テンポが速いので次に次に、と読み進む。
 しかし、書き方は結構独特。何せほとんどの文章が一人称。主人公であるベレッタから見ただけでは無く、それでれの登場人物の視点から書かれている。日記や、手紙、電信など。
 それは巴里が文字による表記によって物事を確立する性格を持っているから。それに乗っ取って書いているためこうなっている。

 さて、次はDTかな。ベレッタが巴里に行けるのはDTの技術援助があったからだし、さるがかわいいからな。

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